オーダースーツおすすめ完全網羅 比較ランキング50店 > コラム > イギリス・イタリア・アメリカ・日本のスーツの歴史を解説
スーツの歴史は発祥地であるイギリスで16世紀頃から始まりましたが、日本のスーツの歴史は明治維新以降に異国文化として流入してきたところから始まります。 明治4年に発令された勅諭により、日本では礼服として洋服が着用されるようになりました。 礼服として着用されていた名残から、現代でもビジネスの場ではスーツを着ることが文化として残っています。 今回は、このように時代とともに変化しているスーツの歴史について詳しく説明します。 スーツの歴史について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
スーツの起源は16世紀頃のイギリスであるという説が有力です。
意外に思われるかも思われるかもしれませんが、スーツの原型は農民が農作業着として着用していた衣服だったと伝えられています。
この服装が、次第に軍人や貴族、航海士などに広まり、洗練されたデザインへと進化していきました。
そして19世紀頃になると、モーニングスーツや燕尾服が登場します。貴族が朝に乗馬や散歩を楽しんでから、そのまま宮廷に上がることを目的として、動きやすいデザインに改良されました。
モーニングスーツや燕尾服は、裾の長い服装です。これは屋外で歩くことを目的にした服装だったのですが、室内で座って過ごす際には少し不便でした。そのため、次第に裾を短くしたタキシードやジャケットのスタイルが主流になっていきます。
20世紀になると、さらに短い丈や肩幅や胸幅の広いデザインが登場。アメリカを中心にビジネスウェアとしての需要が高まると、スーツは世界中に爆発的に普及しました。
まず、スーツ発祥の地であるイギリスとイタリア産・アメリカ産のスーツの歴史について解説していきます。
スーツの原型は、19世紀ごろに生まれたといわれていますが、元々は16世紀ごろに誕生した「フロック」と呼ばれる服が起源だといわれています。 フロックは、ヨーロッパ圏の農民の外出時や農作業をするときに着ていた服のことで、丈が長いことが特徴です。 このフロックが、イギリスの職人によって高級な素材で仕立て上げられ、18世紀に「フロックコート」というものへ進化しました。 そして、シャツとパンツ・ベストにネクタイを合わせるというファッション法がフロックコートスタイルとして確立され、これが現代のスーツスタイルの土台となっています。
フロックコートを貴族が自分たちの服装に取り入れ、朝の散歩がしやすいように前裾がカットされたモーニングコートや、馬に乗りやすいように作られたテールコートが生まれます。 貴族が着用したことにより、これらの服装が礼服と認識されるようになり、現在でもその名残として正装としての役割を引き継いでいます。 また、フロックコートとモーニングコートは、どちらとも屋外での着用を目的としたものでした。 しかし、当時のイギリス貴族には1日のなかで何度も着替える習慣があったので、室内でもくつろぎやすい上着が必要になります。 その時に作られたものが「スモーキングジャケット」と呼ばれる食後の一服を楽しむときに着られる上着であり、現在のジャケットスタイルの原型になっているものです。 このようにイギリスのスーツには、当時の文化や習慣を反映しながら進化してきたという歴史があります。
続いて、イギリススーツの歴史の起源とも言える「サヴィル・ロウ」の紹介をします。 サヴィル・ロウはロンドンにあるストリートの名前で、紳士服のテーラー(仕立て屋)が多く集まる場所です。 イギリスの首都であるロンドンはスーツ発祥の地と呼ばれており、有名なテーラーはサヴィル・ロウに集まるといわれています。 サヴィル・ロウは、もともと軍事関係者やその親族らの居住区でした。 しかし、1760年頃から始まったイギリスの産業革命により、富を得た紳士階級の間で服飾に関する流行が生まれ、紳士服の聖地のようなな場所へと変化したという歴史を持っています。
イギリスのスーツの大きな特徴は厚みのある生地です。イギリスは常に霧が発生しやすく雨が降りやすい気候です。そのため、洋服はシワを防ぐしっかりとした生地が好まれる傾向にあります。経糸と横糸をしっかりと編むため生地に厚みがあり、型崩れしにくく高い耐久性が期待できます。
イギリスのスーツスタイルの特徴は、肩部分にパッドを入れてウエストを細めにすることです。よりスタイルを良く見せる独自のデザインになっています。
また、身体に適度にフィットするシルエットで、きちんとした感じの印象にしやすいのもポイント。カラーはグレーを基調にした深みのある配色が基本です。
上質な生地を使用したイギリススーツは世界的に評価が高く、エレガンスが感じられるスーツとして根強い人気があります。
礼儀正しい振る舞いが重視されるイギリスでは、スーツの着こなしも気品を求められます。着崩したラフな装いではなく、ベストを取り入れたり、ダブルスーツを日常的に取り入れたりなど、品の良さがポイントです。
スーツ着用時は、座る時以外は前ボタンを留める、インナーであるワイシャツはなるべく見せないといった気遣いも必要です。
イタリアのスーツの歴史が始まったのは1980年頃とされており、イギリスと比べるとまだ歴史が浅いです。 歴史が浅い理由は、1980年頃になるまでイギリスやアメリカなどのスーツ生産国の下請けを主に行っていたからです。 1980年頃からイタリアのものが人気になった歴史的な理由としては、1970年代にはじまるスーツのカジュアル化だといわれています。 イギリス発祥のスーツが貴族の礼服が起源だったため、上品さや教養が高いという印象を与える重厚感のあるものが一般的でした。
一方、イタリアには服飾に対して「自分の装いで異性からの目を引く」という考えがあります。 その考えをもとに作られたイタリア産のものは、イギリスのものと比較して柔らかく曲線的なシルエットで、軽めに仕立てられているものが多いです。 曲線的で洗礼されたデザインは色気や繊細な印象を与え、スーツのカジュアル化を含む世界的なファッションブームによって人気になりました。 イタリア産のものが人気になってからは、歴史をもつイギリスとスーツの代表的な国として肩を並べるようになりました。
イギリスを訪れたイタリア人が自国にスーツを持ち帰って、独自のスタイルを築いたイタリアのスーツ。
イタリアの気候と国民の好みに合わせたイタリアスーツは、イギリススーツに比べて柔らかい生地を使用しているのが特徴です。
イタリアは朝夜と昼の寒暖差が大きいため、気温に合わせて脱ぎ着しやすいスーツが求められます。
また、気候的に湿度を意識する必要がないことから、生地は柔らかく薄いものを使用するなど、着心地やおしゃれな見た目を優先したデザインが多いです。
肩のシルエットはパッドを入れない自然なラインで、Vゾーンを深くすることで程よいセクシーさを演出しています。
イタリアのスーツマナーは、シーンを考慮したメリハリのある着こなしを意識することです。着心地やリラックス感を重視しているなかでも、教会といった神聖な場所や高級レストランなどに行く際には、露出控えめなシックな着こなしが求められます。
逆に、カジュアルな場ではシャツのボタンを外したり、襟元をラフにしたりして抜け感を出し、シーンに合わせて着こなしを自由に楽しむのがイタリア流です。
アメリカの国としての歴史は、17世紀にイギリスなどの西ヨーロッパから多くの移民がアメリカ大陸へやってきたこときっかけに始まります。 このような歴史的背景から、アメリカは民族的にヨーロッパの影響を強く受けました。 ヨーロッパから持ち込まれた文化の1つにスーツもあり、そこからアメリカのスーツの歴史が始まります。
アメリカが独自にスーツを生産し始めたのは20世紀からです。 当時流行していたジャズの影響を強く受け、ジャズをたしなんでいる人がよく着用していたスーツがアメリカでブームになっていきました。 アメリカで生産されるスーツは、一人ひとりの体形に合わせて仕立てるオーダースーツとは異なり、合理性を追求した大量生産が基本でした。 アメリカの伝統的衣装である「アメリカン・トラディショナル」や現代のUSファッションのベースを築いた「アイビー・リーグ」、ヨーロッパ調のスーツである「コンチネンタル」などさまざまなモデルが作られました。
イギリスやイタリアと比べ、既製服に多くのバリエーションを持たせていたこともアメリカのスーツの特徴です。 イギリスのスーツは高級品だと考えられていたので貴族のための服でしたが、アメリカのスーツは大量生産によって安価なので庶民のための服だったといえます。 アメリカが合理性を追求する文化を持っていることから、アメリカのスーツは「着やすさ」が重視されています。 そのため、イギリスのような礼服としての意識やイタリアのような異性へのアピールなどと比較して、ファッションに対する思い入れが弱い傾向があるのです。 そのため、現代でもアメリカのスーツは機能性重視に作られているものが多くあります。
アメリカのスーツは、ヨーロッパからスーツ文化が伝わり、20世紀から本格的に生産され始めました。
オーダーメイドのつくりとは異なり、工場で大量に生産されたものが主流で、体型に関係なくどんな人にも合わせやすいスーツが作られてきました。
アメリカのスーツは「自由の国アメリカ」を象徴するように、階級が反映された堅苦しい印象ではありません。
スーツのデザインは、ゆとりのあるシングルタイプのスーツがメインになり、ウエストは絞らずナチュラルなラインが特徴です。
アメリカブランドのスーツは、体のラインが出にくい着心地の良さから、動きやすく取り入れやすいと支持されています。
アメリカのスーツマナーは、日本と同じくスーツにネクタイを着用するのが基本になります。
ただ、広い面積のアメリカでは西海岸と東海岸ではマナーが異なる場合もあります。西海岸側は東海岸側に比べてラフな着こなしが多くなる傾向です。
また、ハワイやグアムなどのリゾートの場合はアロハシャツを着用する場合もあり、地域に合わせたスタイル選びが必要となります。
日本のスーツの歴史は、1858年の鎖国終了による外国との貿易開始をきっかけに異国文化として流入し、富裕層を中心に少しずつ着られるようになってきました。 英国ではスーツは紳士の装いとされていますが、日本で作られた当時はフロックコートが礼服として用いられました。 また、通勤着や日常着としてはジャケット・ベスト・スラックスがすべて同素材、同色、同柄で3点揃っているスリーピースと呼ばれるものが普及しました。
スーツが一般男性に広まり始めたのは、明治20年(1887年)の明治維新以降になります。 日本にスーツの文化がもたらされたのは明治維新以降でしたが、明治時代初期の日本人が着用していた衣服の大半が浴衣や着物などの和装でした。 しかし、明治4年(1871年)に出された勅令によって翌年から礼服として洋服が採用され、そのことをきっかけに大衆にも広まっていきました。 大正時代になると、第一次世界大戦の影響によって欧米諸国から日本への輸入がほぼ無くなります。
そのため、国内では重化学工業を中心に企業が相次いで生まれ、さらに海外需要は戦争品に大きく関わっていた海運業・造船業のものが急増します。 日本もイギリスと結んでいた日英同盟によって戦争に参加しますが、戦争の主要国ではなかったため貿易によるサポートが中心でした。 第一次世界大戦によって需要が急増した品目を中心に輸出することによって、日本は大きな利益を獲得し、それが大戦景気と呼ばれる歴史的な好景気に繋がります。 当時の日本では、スーツはすべてテーラーが個人の体型に合わせて作る高級品でした。 しかし、この歴史的な好景気は一般庶民全体に大きな経済的恩恵を与えたので、それにともない高級品であるスーツスタイルが大衆向けに一気に増えていきました。 1926年の昭和時代に入ると、第二次世界大戦をはじめとする戦争が激化します。 戦争の激化にともない物資が不足し始めた日本国内では、国家総動員法が1938年に出され、華美を慎む傾向が広がりました。 そして、昭和15年(1941年)に出された国民服令により、人々の衣服にも制限がみられるようになりました。
第二次世界大戦が終戦した後は、機械の発達により大量生産が可能になったことから、スーツは一般的に広く普及していきます。 1960年代には、体のラインがわかるタイトなアイビールックが流行しました。 1970年代に入ると、襟幅の広いスーツに太いネクタイを合わせるスタイルが流行し、バブル期である1980年代以降にはダブルボタンの余裕のあるシルエットのものが流行しました。 その後、現代にかけてそのスタイルはタイトになっていきます。 使われる生地も、軽やかで滑らかなものが好まれる傾向があり、相手により自然な印象を与えられるスタイルが主流になっています。 貴族の礼服として歴史を始めたスーツは、いまでも男性ファッションの基本スタイルです。 スーツはこのように歴史とともにさまざまなスタイルが生まれ、変化しながら人々に愛され続けています。
日本のオーダースーツ文化は、明治期以降に洋服文化が浸透する中で、独自の発展を遂げました。
日本独自の文化である「和服」は、オーダースーツの発展にも大きな影響を与えています。和服は個人の体型に合わせて仕立てる文化であり、着心地の良さが重要視されているのが特徴です。この着心地の良さを洋服文化にも取り入れようという動きが起こります。
その結果、日本のオーダースーツは個々の体型に合わせて仕立てられ、快適な着心地を持つことから世界でも高い評価を得るようになりました。
なお、高級ファッションの代表的な国フランスは、日本のオーダースーツにも大きな影響を与えています。特に、1960年代以降にはフランスの仕立て屋の技術やスタイルが取り入れられ、日本独自のオーダースーツのスタイルが形成されました。フランスの影響を受けた日本のオーダースーツは、欧米のものとは異なる独自の美学を持っています。
また、日本は繊維産業が盛んな国であり、高品質な生地が豊富にあります。このため、日本のオーダースーツは、高品質な生地を使用することができ、品質の高さが際立っています。
戦後は素材の不足から量産スーツの需要が高まりましたが、高度経済成長期に入ると高品質なオーダースーツへの需要が増加しました。
その中で、新しいファッションカルチャーや個性を表現する文化が芽生え、オーダースーツは一般的な贅沢品から自己表現の手段として活用されるようになりました。
その後、1980年代以降にはビジネスシーンでのスーツ着用が定着し、オーダースーツはビジネスマンの間でニーズが高まりました。
近年では、素材や技術の進歩によって、マシンウォッシャブルやシワになりにくいなど機能性に優れたスーツや、環境に配慮した素材を使用したスーツなども注目されています。
スーツはそれぞれの国の気候や国民性に影響を受けながら発展していく傾向があります。日本と世界のスーツの違いはどのようなものでしょうか?
まず、色に関しては、日本のビジネススーツはブラック系が一般的に販売されていますが、海外では一部ハイブランドを除いてあまり見かけません。特に黒無地に関しては、海外ではタクシー運転手やホテルスタッフの制服といったイメージが強いと言えます。そのため、海外出張や旅行では黒のスーツを避けた方が無難でしょう。海外においてビジネススーツはネイビーかグレーが基本で、多彩な濃度のカラー展開があります。
また、海外に礼服や喪服は無いことも日本との大きな違いです。礼服や喪服は日本限定の準礼装で、海外の葬儀では基本はダークスーツを着用します。国によって違いはありますが、悲しみを表すため光沢のある生地は避け、無地の白シャツにネクタイは親族は黒、参列者はダークカラーを着用するのが一般的です。
ここまでスーツの歴史について説明してきましたが、いかがでしょうか。 普段なにげなく仕事着や冠婚葬祭で着ていますが、明治維新を経てイギリスから日本にもたらされて以来、日本の歴史の変化と共にさまざまなスタイルを生み出しています。 人々の生活や流行とともに変化しつつ歴史を刻んできたスーツのことを深く知ることで、より一層愛着を持つことができます。 歴史について深く知ることで、自分が着用しているものの手入れをこだわることや、世界に1着の自分だけのオーダースーツを仕立ててみてはいかがでしょうか。 当サイトがおすすめするオーダースーツ専門店のテーラーは、皆さん歴史だけでなく仕立て方や生地の特性などについて豊富な知識を持っています。 もしオーダースーツに興味があるのであれば、ご利用することをおすすめします。